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前立腺がんの治療 - はじめに
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急増する前立腺がん
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国内の前立腺がん患者は,近年急増しています。
日本においては,がんの登録制がないので,あくまで推計となりますが,患者数は1975年には約千人程度でした。
ところが,2000年ごろには罹患数(年間の新規発生患者数)は,2万人を越え,2014年の予測では7万5千400人とされています。
厚生労働省患者数調査によれば,2011年の時点で,前立腺がんの患者数は約18万人と推定されています。
男性では胃がん,肺がん,大腸がんに次いで4番目に多く,2020年には,患者数は,肺がんに次いで第2位になると予測されています。
このように,前立腺がんの罹患数や患者数が,急増した原因として,高齢化が進んだことや高脂肪食など,食生活が欧米化したこと,さらにはPSA検査(腫瘍マーカー)検査などが普及し,発見されやすくなったことなどが考えられます。
事実,下図に示されているように,PSA検査が広く普及した2001年以降,前立腺がん患者数が急増しています。
国内の男性癌罹患数の推移 |
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(地域がん登録全国推計より) |
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現在,完治が可能な「根治療法」の基本は手術,放射線治療の2つです。
この10〜20年間で診断・治療法の革新が進み,早期に発見できれば,ほぼ完治することが可能といわれるまでになりました。
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発見しやすいが,経過観察か積極的治療を行うかの判断が難しい
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前立腺がんは,高齢者には,かなりの頻度で発見され,血液検査によるPSA値からも発見しやすいがんといえます。
前立腺がんは,多くの場合,進行が遅く,経過観察が優先される場合も多いのですが,一方で,進行の速いものもあり,治療選択が難しい面もあります。
進行度が遅いものにまで,不要な検査や治療までおこない,本来経過観察だけで天寿を全うできる患者にまで治療する「過剰治療」により,QOL(生活の質)を下げてしまっているのではないか,という指摘もあります。
しかし,逆に,前立腺がんの中でも,進行の速いものもあり,すぐに治療を行わなかったために,手遅れになってしまうということもあり得ます。
前立腺がんは,種類も多いため,進行の遅いがんか,そうでないがんか,見極めが難しくもありますが,見極めは重要です。
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構造と機能
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前立腺の構造と機能 |
前立腺は生殖器官の一つで,膀胱から尿道へと続く部位に存在し,その中を尿道が通っています。
前立腺はクルミに形状や大きさが類似しており,男性ホルモンの一種であるテストステロンの影響を受けています。思春期以降に,テストステロンの分泌が増加し,この臓器も成長します。
いったん,前立腺がんが発生するとこのテストステロンの影響で増殖しやすくなるため,この男性ホルモンの分泌を抑制するホルモン療法もあります。
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前立腺の構造と周辺の臓器 |
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成人になると,長さは3cm程度で,重さは15〜20gほどになります。
前立腺の背中側は,直腸の下部にそって存在するため,直腸診と呼ばれる,直腸からの指を入れ直腸の壁越しに触れる検査は,限られた部位ではありますが,前立腺がんの発見に有効です。
構造的は,尿道の周囲にある移行領域(内腺),中心部にある中心領域(外腺),外側にある辺縁領域(外腺)に分けられます。
内腺と外腺は主に,前立腺液を分泌する腺細胞,中心域は主に筋肉細胞で構成されています。 |
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増加の原因
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高齢者が多くなった |
前立腺がんの患者は,,一般に60歳代から増加しはじめ,70歳代で最も多くなり,80歳代の罹患率は,50歳代の100倍にも達しています。
前立腺がんの患者数が特に多いアメリカでは,患者の約70%以上が65歳以上だと報告されています。
現在,日本においては,人口構成比で圧倒的に多い団塊世代が,高齢化して60歳代となり,発症しやすい年齢になってきていることも,急増の原因とされています。
現在でも,平均寿命は延びており,今後も高齢化社会が進むと共に,前立腺がん患者の増加は避けられないと考えられています。
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食生活の欧米化 |
前立腺がんの発症は,食生活と関係が深く,特に高脂肪・高タンパクの食事は癌の発症率が高くなるといわれています。
事実,スイスや北欧のスウェーデンなど,乳脂肪を含む脂肪摂取量の多い国々では,前立腺がんの患者が多いことで知られています。
日本人でも,かつては魚や野菜などが中心の食生活でしたが,戦後,肉食中心へと変化し,それが増加の原因の一つとなっています。
しかし,最初に発生したがん細胞が,問題となる大きさになるまでには,10年以上かかるとされており,ある程度の年齢になってから,食生活を変えてもあまり効果は期待できないともいわれています。
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PSA検査の普及
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前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる,前立腺上皮から分泌されるタンパク質分解酵素は,腫瘍の発生後血液中に大量に放出され,血中濃度が上昇します。
このようなPSA検査が,検診や人間ドックなどで,広くおこなわれれるようになり,それまで,発見されにくかった初期のがんでも発見できるようになりました。
そのようなことも,前立腺がんが増加した一因といわれています。
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特徴
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高齢者が多く,進行が遅い |
前立腺がんの特徴の一つとして,進行が遅いことが多いということがあげられます。
したがって高齢で発見された場合,手術など,積極的な治療をおこなわず,経過観察をおこなって様子をみるという方法が選択される場合もあります。(待機療法)
この場合,腫瘍が増大してくれば,治療を行いますが,増大しなければ経過観察するだけですが,それで天寿を全うできる患者さんもいます。
このように,前立腺がんを発症していても,気づかず他の病期で死亡する場合もあり,その場合,死後の解剖で発見されることも珍しくありません。
前立腺がんは,高齢者に多いということも特徴であり,60歳を過ぎてからの発症が多く,70歳代がピークとなっています。
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人種など,遺伝的要因が大きい |
前立腺がんは,人種などの遺伝的な要素が大きく影響します。
たとえば,発症率が最も大きい人種が黒人であり,ついで白人,そして黄色人種となっています。
悪性度もこの順になっており,人種間の違いが大きいのもこのがんの特徴といえます。
これは,人種によって男性ホルモンであるアンドロゲンの濃度に差があることが原因とされています。
また,父親,兄弟,息子の第一近親者に前立腺がんがある場合には,発生頻度は一般の人の2〜10倍高いといわれています。
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骨転移が多い |
また,前立腺がんの特徴として,骨転移が起きやすいということもあげられます。
他のがんの場合,骨に転移するのは進行がんですが,前立腺がんは他の部位に転移せずに,直接骨部に転移することも,しばしばみられます。
前立腺がんでは,リンパ節を通して広がるリンパ行性転移と,血管を通して広がる血行性転移があります。
前者の場合,前立腺周辺のリンパ管から,骨盤リンパ節と転移し,後者の場合,脊椎の静脈を通して,骨盤や,下部腰椎,大腿骨などに転移します。
前立腺がんは発症してから,骨に転移するまでの中央値,すなわち半数の患者に骨転移がおこる期間は8年であり,骨転移後の生存中央値(半数の患者が亡くなるまでの期間)は約5年とされています。
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前立腺部の外側に発生しやすい
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前立腺は,内側にある内線(中心領域・移行領域)と外側にある外線(辺縁領域)に分けることができますが,前立腺がんのほとんどは辺縁域に発生します。
領域別の発生率は,辺縁域が70〜75%を占め,移行域が20%程度,中心域が5〜10%です。
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進歩し,変わりつつある前立腺がんの治療
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かつては,前立腺がんにおいて,根治の可能な治療法は手術のみとされ,特に高リスクの前立腺がんの場合は,周辺部と共に切除するのがよいと考えられていました.
しかし,近年の放射線療法の飛躍的な進歩により,その考え方が変わりつつあります。
特に,腫瘍部に放射線治療をピンポイントで照射する技術が確立し,前立腺がんにも生かされています。
前立腺がんでは,照射角度によっては,直腸がダメージを受けやすく,できるだけ直腸への照射を避ける必要がある一方で,前立腺がんは放射線感受性が低いため,強い放射線を照射する必要があります。
そこで,登場したIMRT(強度変調放射腺治療)とよばれる照射技術は,放射線のビームの強弱をつけることが可能となり,直腸や尿道などの正常組織への照射を抑えることに成功しています。
このように外照射の技術が進歩する一方で,内部照射の一つであるカプセルに封入した放射性物質を直接前立腺内に挿入する小線源療法の技術も確立し,好成績をあげるようになりました。
低リスク症例では,これら,手術,外照射,小線源療法の治療成績は同等という結果が出ています。
ある報告によれば,高リスク症例では,小線源療法+外照射と手術で比較した場合,手術の成績は,5年非再発生存率が45〜55%であるのに対して,小線源療法と外照射の併用ではホルモン療法をしなくとも,およそ80%にも達しているとのことです。
すなわち,放射線治療では,手術を凌駕する好成績をあげるようになってきているのです。
手術では,尿失禁や性機能障害も高い確率で起こりますが,放射線治療の腫瘍部に集中して照射する技術の進歩により,これらの障害も格段に減らすことができるようになりました。
さらに,実施している施設は限られているものの,小線源療法,外照射,ホルモン療法の3種類を併用することにより,治療成績はさらに向上しているという報告もされています。
このようなことから考えると,医師から手術をすすめられても,セカンドオピニオンさらにはサードオピニオンまで受け,放射線治療で可能かどうかということを調査することも大切です。
また,放射線治療装置は施設によって格差が大きいため,これまでの実績から考えると,IMRT(強度放射線治療)のような,ピンポイント照射が可能な施設を選択すべきといえるでしょう。
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